木構造の話しのつづきです。最近一級建築士の免許偽造問題が新聞記事になっています。
木造構造との関連でお話します。
一級建築士はほんとに木造の安全な建物の設計ができるのか?と聞かれると、あたりまでしょう!と一般の方は答えるでしょう。ところが木造の設計を日常的にしている設計者にとっては必ずしもそのようには答えられません。
日本の建築士制度では1級建築士はどのような規模の建物でも設計できることになっています、一方2級建築士はある一定の規模までしか設計できません。
通常、大学の建築学科を卒業した人は実務2年を経過すると1級建築士の受験資格ができます。そこで、大学卒業者は1級建築士試験を受験しますがこの試験の内容の製図はコンクリートの建物が課題に出されます。受験者はコンクリートの勉強をして合格します。ですから木造の勉強は試験においては通常しません。ですが、合格すれば法律的には木造建築の設計ができるのです。
たとえば、大学卒業後、大手の建設会社や大きな設計事務所に入った場合、ほとんどの設計は木造以外です。そして1級建築士試験をいきなり受けることになります。結果的に木造の勉強はまったくしていない1級建築士がとても多く居ます。そのひとが独立して友人親類の住宅を木造で設計しようとしても基本的な木造の構造がわからず、大工さんにまかせきりになってしまうことがあります。
大工さんが先のような工事をしても不適切な工事を指摘できないこともあります。
ちなみに、2級建築士の製図の試験は木造です。
実際、私の独立直前の事務所のボス(一般の人も良く知っている有名事務所)は一番小さな建物でも10臆円単位の設計でしたので木造の図面は書いたことがありませんし、書けませんでした。
まして構造のことなどまったくわからずじまい。
1級建築士にもこのような人が大勢いること、一般の人はあまり知らないようです。
先の事務所では、そんなわけで住宅は私が担当することになりボスの口出しなしで自由にやらせてもらいました。これはラッキーでした。
私は学生時代から大工さんのアルバイトをしていましたので、木造の技術は現場で覚えました。
それが幸いでした。
建築士試験も大学卒業、即2級試験を取得し、3年後に1級を取りました。
実際の設計では、一級建築士のだれでもが木造の建物の設計ができるスキルがあるわけではないのです。
ですが、よくよく考えて見れば当たり前かも知れません。お医者さんの免許はやはりひとつの医師免許と聞きます。しかし私は胃の調子が悪くても産婦人科には行きません。子どもができた女性は産婦人科を選びますが外科には行きません。お医者さんの世界ほど明確ではなくても同じ1級建築士でもできることとできない事がそれぞれあります。特に、大規模な木造建築の場合、私たち意匠設計者は構造設計者とパートナーを組むのですが、RCや鉄骨だけを設計している構造設計者ではできない人のほうが多いという現状があります。
一級建築士は、どのような大きさの建物の設計をしても良いというのが建築法規で保障されていますが、どのような建物でも設計できる能力がある、ということにはなりません。
建築士免許証です、今は運転免許証のような顔写真入りの小さなものになっています。
位置下の終了証は設計事務所には事務所を管理する建築士が必要です。講習を受けて終了証をもらわなければなりません。
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