耐震工事が本格的に始まりました。
最初の作業は耐震補強をする外壁の解体です。耐震補強をする外壁は基礎と土台を追加します。

基礎の増設のところにいれる鉄筋
壁は筋違いを入れて地震時の建物の揺れを止める働きをします。
伝統的建物と現代在来工法の大きな違いのひとつは、伝統的建物は基礎が横長に繋がっていません。
柱の下はすべて束石といって現代風にいえば独立基礎になっています。
束石の下は土をつき固めています。この土固めの技術・工法が重要です。
発掘された遺構で建物がなくなっている場合でもこの土の状況を詳しく調査し上に乗っていた建物の大きさが想定できます。出雲大社がかつては相当大きな建物だったことが記録に残っていますがあまりにも大きくて記録の真偽はずっと疑問視されてきましたが近年この調査で記録は本物であることが証明されました。
ご興味のある方は出雲大社の記録を見てください。
束石を柱の下に置く最大の理由は柱を腐らせないためです。
木造の大敵は湿気です。湿気と空気と温度の3点がそろうと腐朽菌が発生します。
空気と温度は自然界のものなので通常状態で防ぐことは出来ませんが湿気は工夫次第で防ぐことが出来ます。
湿気と空気と温度の3つ内どれかひとつでも欠けると腐朽菌は生きていれませんので木は腐りません。例えば、南の国のリゾート写真を見ればよく水上コッテージが出てきます。水中の木の柱は腐っていません、水中では空気が無くて菌が生きていられないからです。しかし水面上の部分は腐り始めていることがあります。空気に触れているからです。
江戸の絵図などを見ると貯木場が海だったり河口だったりする絵を見ることが出来ます。
水の中に木を入れて腐らないのか?と不思議に思う方もいますが理由は以上です。
他にもありますがちょっと専門的なので割愛します。
ちなみに、戦前の大きな建物の杭は松でした。
木の杭と思われますが、地中で水に濡れたまま=空気に触れていない状況を造って腐らせないという方法です。
東京駅の前、丸ビルには解体された旧丸ビルの松杭が展示されています。
ぴかぴかで、今山から切り出して皮むきしたように思えるほど綺麗です。ぜひ見に行ってください。
木を腐らせない工夫と同時に腐ってしまった木をどうするか?ということも伝統的建築に見ることが出来ます。
腐ってしまった柱の、土に近い部分を切り落とし、柱を継ぎ足すという方法はよくやられる方法です。
古い建物の足元を見ると写真のように柱を継ぎ足している建物を時々見かけます。
柱に限らず木は劣化した部分だけを取り除き新しいものを継ぎ足したり埋め込んだりという技術を、日本の木造建築は伝統的におこなってきました。これは鉄筋コンクリートの建物では考えられないことです。

京都・渉成園の接木柱
南禅寺の三門 柱と欄干
近年このように建物を長く大事に使う心や技術が薄れてきているのはちょっと寂しいです。
大学教育での木造建築に関しては、歴史教育に偏っていて技術的な教育がおろそかです。
さらに、一級建築士を取ればどのような建物を設計しても法律的には良いことになっていますが、このような木造技術を知らないコンクリートや鉄骨一級建築士がいたるところにいます。
そのような一級建築士がこの建物を見たら即座に建替えの発想になることでしょう。
この建物の柱も地面に近い部分はほとんど腐っていました。伝統的な手法を引きついで現代風に補強・接ぎ木をしていきます。

竹小舞の上に土が乗っています、この土が瓦を止める接着剤の役目をしています。
こちらの板は化粧野地板といって下から天井が見える造りになっているため、竹の代わりに板です、重ね部分部に隙間が開かないように差し込めるように削られているのがよく見えます。

瓦が取り省かれた下屋部分、まだ土が少し残っています。

取りは除かれた瓦、将来庭に埋め込んで使う予定です。

屋根の下地材は入ってきました、ひのきの良い香りがします。
垂木に使われる材料は通常より太い材料です。瓦屋根をしっかり130年支えてきた材料と同じ大きさです。
澤野
最近のコメント